あなたは「ゆさぶられっこ症候群」という病気を知っていますか? この病気は、アメリカでは 30年ほど前から事例が報告されていますが、日本では、小児科医でさえも知らない人が多いので す。インターネットを用い検索しても、海外では多数ヒットしますが、国内では関連するサイトが ヒットすることはありません。PIFAは、TBSテレビ「ニュースの森」の協力をいただき、保 育士のみなさん、そして、子育て中のみなさんに、この「ゆさぶられっこ症候群」という病気の情 報を提供したいと思います。保育士の皆さんは、この情報を保護者の皆さんにお知らせいただけれ ばと思います。 *ゆさぶられっこ症候群ってなに? ゆさぶられっこ症候群(Shaken baby syndrome)は、乳幼児を揺することに よって、頭頸部が強く動揺し、その結果、頭蓋内出血や眼底出血が引き起こされるもので、その予後 は悪く、死亡や脳性麻痺、精神運動発達遅滞、視力障害などを引き起こします。ゆさぶられっこ症候 群は、虐待との関連を強く示唆された症候群ですが、普段の子育ての中にも、ゆさぶられっこ症候群 の原因になる(高い高いなど)ものもあり、育児に関係する方に、正しく認識してもらう必要がある 疾病です。 *ゆさぶられっこ症候群の定義 ゆさぶられっこ症候群は、 @網膜出血 A硬膜下血腫またはクモ膜下出血 B体表の外傷が軽微またはない を診断の三つを特徴として提唱された症候群で、小児とくに乳児の体を揺さぶること、ならびに、それ に付随する外傷等によって脳組織に加速度損傷と打撃損傷が加わり、その結果、頭蓋内に出血を起こす 病気の総称です。 *ゆさぶられっこ症候群の原因 乳幼児は、 @頭部が相対的に大きく重い。 A頸部の筋肉が弱いので支持力も弱い。 B脳が未発達のためクモ膜下腔が大きく、揺さぶられることにより脳組織の移動が大きい。 C脳表面の血管構築が弱い。 などの解剖学的な特徴があります。したがって、乳幼児を揺さぶられることにより脳表面から頭蓋骨を 裏打ちする硬膜に連結している血管(橋静脈)が切れるために硬膜下血腫をきたすと報告されています。 近年、精巧に作られた頭部モデルの実験から、揺することだけで起こるのではなく、揺すったあと頭部 を打撲するなどが原因といわれ、Shaken Inpact Baby Syndromeと呼ぶこ とも提唱されていますが、基礎疾患として脳の病変があれば、少し揺すっただけでも橋静脈が切れて頭 蓋内出血を起こすと言われています。 *具体的症例 @強い子に育てたいと父親が少し乱暴に高い高いをした。 Aゆらゆらと20分間揺さぶり続けた。 B椅子に座った状態で、赤ちゃんの上半身をぱっと離して逆さまにした。 C父親が2秒間強く揺さぶった。 D鼻血が出るほど背中を強く叩いた。 C、Dなどのように明らかに虐待と言えるものもあるが、@からBのように、親の認識不足からゆさぶ られっこ症候群を引き起こしてしまうケースもある。また、6ヶ月を過ぎてくると首もすわり、高い高 いなどをすると喜ぶようになるが、少なくとも1歳を過ぎるまでは、子供をむやみに揺さぶらない配慮 が必要である。 *ダミーを用いた実験結果(資料提供TBSテレビ) ・高い高い(2G) ・強く揺する(6G) ・50cmからのふとんへの落下(50〜60G) ・平手で頭部を叩く(50〜60G) ・椅子に座った状態で、揺さぶったあと畳に落とす(80G) ・上記で硬い床の場合(100G) 高い高いでさえ、ジェットコースターに乗るくらい(0歳児をジェットコースターに乗せる事はしな いはずです)の重力加速度をもつため、0歳児を高い高いすることは厳禁です。また、つかまり立ちや、 つたえ歩きをする頃になると、不意に転んで頭部を床などに強打することもありますので、赤ちゃんの 行動に十分な配慮する必要があります。 *まとめ 赤ちゃんが健やかに育つためには、周囲の大人の十分な配慮が必要なことは言うまでもありません。ゆ さぶられっこ症候群は、虐待との関連も示唆されますが、不注意な子供のあやし方や、行動観察の甘さが 原因としても起こってしまいます。ゆさぶられっこ症候群を起こさないためには、 @赤ちゃんを揺さぶらない。 A子供が喜ぶからと言って高い高いをしない。 Bつたえ歩きをするようになったら、転んで頭部を打たないように近くで注意深く観察する。 C赤ちゃんが泣いてイライラしたら、一旦その場を離れて、落ち着いてから赤ちゃんに接する。 など、育児をする者が、赤ちゃんに十分な配慮をする必要があります。赤ちゃんの健やかな成長は、周囲 の大人の配慮によって守られるものです。 |